ステージ撮影でのフラッシュ

個人的にイベントのステージ撮影をする機会が多いのですが、室内や夜間などのイベントの際にフラッシュ撮影をされる人をときおり見かけます。
コンパクトデジタルカメラや携帯電話・スマホのカメラ、少し前ならインスタントカメラなどで、たとえば夜間スナップ撮影をする場合にフラッシュ撮影するのは一般的ですから、おそらくその感覚の延長上なのでしょう。
しかしステージ撮影においてはフラッシュ撮影にはさまざまな問題と弊害があります。

(1) 意味がない
通常ステージ撮影は被写体までの距離が数メートルから数十メートルあるのが普通です。この場合、フラッシュを使用してもほとんど被写体に光は届きません。つまり使用してもあまり効果も意味もないのです。
効果があるのはたとえば夜間、周囲の空間や景色が真っ暗な中で、近距離にいる被写体だけを明るく浮き出させたい場合などです。つまり夜景を背景にして目の前の人物を記念撮影するような場合ですね。
ステージの場合、ステージ上は照明が当たっており、演者もステージ背景もほぼ同等の明るさです。暗いのは客席だけです。このような場合にはフラッシュは適しません。

(2) 他の撮影者に迷惑
たいていのカメラは、ボタン半押しの状態でセンサーが距離や明るさを判定して露光を決定し、ボタンを完全に押し切るとシャッターが切られるようになっています。そのため、センサー測光の時点とシャッターの時点で大きく光量が変化するとアンダー(露光不足)やオーバー(露光超過)になり、真っ暗または真っ白な写真になってしまいます
フラッシュ撮影している撮影者のカメラは、フラッシュと連動しているので、フラッシュによる光量の増加を計算に入れて測光していますから問題ないのですが、他の撮影者のカメラは、他人のフラッシュの光量なんて予測しようがないわけですから、もし測光時にはなかったフラッシュの光がシャッター時に照らされるとオーバーになり、逆に測光時にフラッシュが光っていてシャッター時に光がなくなるとアンダーになってしまいます。

イメージ 1

(▲他の撮影者のフラッシュによってオーバーになった例)

イメージ 2

(▲上段がアンダーになった例。下段のほぼ同じ構図の通常と比較するとよくわかる)

このように、フラッシュ撮影は他の撮影者の写真に勝手に影響を及ぼす、迷惑になる存在なのです。
他にも、ステージ背景に被写体の影が映り込む、被写体の陰影が濃くなってしまう、被写体の目に光が反射して猫目状態になる、など、せっかくの写真が台無しになる迷惑な効果がいろいろあります。

(3) 演者に迷惑
フラッシュの光をまともに正面から見たら目がくらんでしまいます。ステージ上の演者はパフォーマンスに集中している状態ですから、そこにフラッシュの光を浴びせられることは集中を乱したり、場合によってはパフォーマンスの邪魔になる場合があります。

以上のように、ステージ撮影においてはフラッシュを使用すべきでない理由がたくさんあります。
室内や夜間の場合、特に動きが激しい被写体の場合は、ある程度のシャッター速度を確保する必要がありますので、できるだけ光量を確保したいという気持ちはわからないこともないです。しかし、そのために迷惑をかけるようなことをすべきではありません。
室内や夜間のステージ撮影でフラッシュを使わずによい写真を撮るにはどうすればいいでしょうか。
それは絞りを最大に開放し、ISO感度を上げることです。一眼レフカメラの入門機レベルの基本セットに付属しているレンズ程度(F値4.0~5.0程度)でも、ISO3200に設定すれば照明のある夜間の野外ステージでもシャッター速度1/200くらいで撮ることが可能です。画質もそれほどは犠牲になりません。
遠くから200mm程度のズームで撮る場合などはどうしてもリーズナブルな価格帯のレンズでは不安でしょうから、そういう場合はお値段は張りますがより明るいレンズを購入することをオススメします。
いずれにしてもフラッシュ使用ではいい効果は得られません。

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